
「経験→変化・気づき」から考える200~250字
「作文が苦手です。」
京都教育大学附属桃山中学校を目指す受験生たちから、よく聞く言葉です。
何を書けばいいのかわからない。
書き始められない。
書き始めても200字まで届かない。
反対に、書いているうちに話が広がって250字を大きく超えてしまう。
けれども、作文を書くために特別な経験が必要なわけではありません。
大きな大会で優勝した経験。
海外に行った経験。
人に自慢できるような特別なキャリアや出来事。
そうしたものだけが作文の材料でありません。
友だちとけんかしたこと。
失敗したこと。
うまく伝えられなかったこと。
後悔したこと。
誰かに言われたひと言が心に残ったこと。
むしろ、そうした「うまくいかなかった経験」の中にその人らしい作文の材料が見つかることがあります。
もちろん京都教育大学附属桃山中学校の作文では、毎年のように同じことが問われるわけでありません。
それでも、過去問を並べてみると「自分の経験」や「人との関わり」を出発点として、
そこから何を感じ、何に気づき、その後の自分がどうなったのか ― という方向に目を向ける問題が目立ちます。
私たちは、この流れを
「経験→変化・気づき」
という視点から捉えています。
たしかにこれはどんな出題にもそのまま当てはまる「作文の型」では残念ながらありません。
しかし一人ひとりの経験からその人自身の言葉を見つけるための捉え方です。
このページでは、2021~2026年度の作文を振り返りながら、
附属桃中の作文で何が問われてきたのかを考えていきます。
※作文…一般入試問題(適性をみる検査Ⅰ)の通常最終問題を指します。確認できる過去(平成15年)にさかのぼり例年出題されています。40点満点中相当な配点が考えられます。おもないわゆる過去問題集(赤本等)では6~10点規模の配点が見受けられます。また、想像をたくましくするとやはり配点以上に価値や評価が加えられると想定しても過剰ではないと判断しています。
適性をみる適性をみる検査Ⅰ 附属桃中は、結局なにを聞いているのか?
「経験から、自分がどう変わったか」― これが当塾の附属桃中作文指導の背骨です。
つまり、「あなたは、その関わりの中で何を経験しそこから何を得ましたか?」といういたってシンプルな対応を軸とします。だから、多くの作文解説で喧伝される『経験→考察→未来』という枠組みをことさら強調しません。
強いて簡単な表現をするのであれば『経験(その多くは失敗)→変化・気づき』という意識の流れを提案します(※『型』として強調しません)。
| 年度 | 出題テーマ | 問いの中心 | 経験との関係 | 「変化・気づき」の視点 |
|---|---|---|---|---|
| 2021 | 言葉の表現に迷った・悩んだ経験 | 経験+言葉についての考え | ◎ 明示 | 経験から言葉への見方が変わる |
| 2022 | 心を動かした人との関わり | どう影響を受けたか | ◎ 明示 | 他者との関わりによる自分の変化 |
| 2023 | 何のために働くか/どんな仕事をしたいか | 自分の考え・思い | △ 必須ではない | 自分の価値観・将来像を言葉にする |
| 2024 | 人間関係をよりよくする | 自分ならどうするか | △ 必須ではない | これからの行動を考える |
| 2025 | 異なる考えを議論して決める | どのように行動したか | ◎ 明示 | 自分の行動を振り返る |
| 2026 | 隠していたことを正直に伝える | どのように話すか+経験 | ◎ 明示 | 経験を踏まえて、伝え方への考えを深める |
「未来」を必須にしない。
近年の出題を並べてみると、言うまでもなく毎年同じテーマが出されているわけではありません。
「言葉」
「人との関わり」
「議論」
「仕事」
「正直に伝えること」。
テーマは、その年によって変わります。
しかし、その奥にある問いには、共通している部分があります。
それは、「あなた自身は、どうだったのですか。」という視点です。
2021年度は、言葉の使い方に迷ったり悩んだりした「体験」から、言葉について考えさせています。
2022年度は、心を動かした人との「関わり」が、自分にどのような影響を与えたのかを書きます。
2025年度は、異なる考えがある中で、自分がどのように行動したのか。
2026年度は、隠していたことを正直に伝えるとき、相手に対してどのように話すのかを、経験とあわせて考えます。
つまり、
「正しいことを知っていますか」だけを聞いているわけではありません。自分の経験を思い出し、そこから自分なりの考えをつくり、それを相手に伝わる文章にする。
そこに、附属桃中の作文の難しさがあります。
だからこそ、私たちは作文を、経験 → 変化・気づきという視点から考えています。
「経験→考察→未来」という決まった型に押し込むのではありません。
その経験によって自分の何が変わったのか。何に気づいたのか。以前の自分と今の自分では、何が違うのか。
そこを探します。
京都教育大学附属桃山中 適性をみる検査Ⅰ 作文 年度ごとの詳細分析
2020年度入試より従来の8教科入試(国社理算+音楽・図工・体育・家庭)が4教科入試(国社理算)となりました。そして2026年度(令和8年度)入試において4教科の入試から『適性をみる検査』(適性をみる検査Ⅰ・適性をみる検査Ⅱ・適性をみる検査Ⅲ)に移行しました。出願時に報告書(小6のみ)の提出もあります。
2021年度 作文 「言葉に迷った経験」から、言葉について考える
| 構図 | 解説 | 出だしの例文 |
|---|---|---|
| 言葉を使うとき、 どのように表現したらよいか 迷ったり悩んだりした体験 | 最初から「言葉は大切です」と書くのではなく、 「なぜ言葉について考えるようになったのか」 を自分の経験から始める。 | (1)私は以前、友達にかける言葉を迷ったことがある。 |
| ↓ | 【経験】 「友達に何かを伝えようとして、言葉を選んだ。」 | (2)「本当のことを言えばいい」と思っていた私は、 ある出来事をきっかけに考えが変わった。 |
| その体験を通して、 言葉について思ったり 感じたりしたこと | 【変化】 「同じ内容でも、言い方によって 相手の受け取り方が変わることに気づいた。」 | (3)言った言わないということが続き、 私は伝えあうという当たり前を あきらめがちになっていた。 |
| ※この「気づき」が作文の中心になる。 | ※出だしに正解はない | |
2022年度 作文 「心を動かした人」から、自分の変化を探す
| 構図 | 解説 | 出だしの例文 |
|---|---|---|
| 「だれとの」 「どういった関わり」が | 「私の心を動かした人は○○です。」 で終わってしまうともったいない。 | (1)私の考え方を変えたのは、 5年生のときの担任の先生だった。 |
| 「あなたにどのように影響を与えたか」 を書く問題。 | ↓ ※(1)よりも(2)へ | |
| 重要なのは、 その人との関わりによって、 自分がどう変わったのか。 | (2)私は以前、失敗するとすぐに「自分には無理だ」と思っていた。 しかし、○○先生に言われた言葉をきっかけに…… |
|
| ※つまり、「人」から始めなくてもいい。 「変化する前の自分」から始める方法もある。 |
2023年度 作文 「経験」ではなく「価値観」を言葉にする年
| 構図 | 解説 | 出だしの例文 |
|---|---|---|
| 1.何のために働きたいか 2.それを踏まえて、どのような仕事をしたいか | ここで 「経験を書かなければ…」 と考える必要はない。 | (1)私は、誰かに「ありがとう」と 言ってもらえることにやりがいを感じる。 |
| ※「経験→変化・成長」に マッチしない。 | 【重要】 自分は何を大切にしているのか | (2)私は、働くことは生活のためだけでなく、 人と関わる意味もあると思う。 |
| 例えば、 「人の役に立ちたい」 だけでは浅い。 なぜなら、 「人の役に立つ」とは、 自分にとってどういうことなのか? まで掘り下げられるから。 | ※「経験→変化・気づき」だけでは 説明できない問題もある |
2024年度 作文 「どうすれば、関係をよりよくできるか」
| 構図 | 解説 | 出だしの例文 |
|---|---|---|
| 誰か/集団とうまくいかない場合、 「少し距離をとって冷静になる」 以外の方法を考える。 | 経験を書け、 と直接指示されていない。 | (1)経験型 私は以前、友達と意見が合わず、 言い争いになったことがある。 |
| 「私は友達とけんかしたことがあります。」 から始めてもいい。 | (2)考え先行型 私は、誰かと意見が合わないときこそ、 相手の話を聞くことが 大切だと思う。 |
|
| 「私は、意見が合わないときには、 まず相手の話を聞くことが大切だと思います。」 でも書ける。 | ※「自分はどちらの書き方が 書きやすいか」 を考える。 |
2025年度 作文 「違う考え」を持つ人と、どう関わったか
| 構図 | 解説 | 出だしの例文 |
|---|---|---|
| 2つの別々の考えについて、 複数で議論してどうするか決めることが 重要だと感じた経験と、 そのときの行動を書く。 | 「議論=相手を言い負かすことではない」 という視点が使える。 | (1)私は以前、 話し合いでは自分の考えを 相手に納得してもらうことが 大切だと思っていた。 |
| 【経験】 自分と友だちで 意見が違った。 【自分の行動】 最初は自分の意見を 通そうとした。 | しかし、 ある話し合いを経験して、 その考えが変わった。 と続けられる。 |
|
| 【変化】 相手の理由を聞いてみると、 自分とは違う考え方にも納得できる 部分があった。 | ※「以前の自分」と 「今の自分」とを 対比させる。 |
2026年度 作文 「正直に伝える」ことを、経験から考える
| 構図 | 解説 | 出だしの例文 |
|---|---|---|
| 適性をみる検査に移行した初年度 | 「正直に言えばいい」 で終わらせない。 【以前の自分】 怒られるのが怖くて 言えなかった。 【経験】 実際に隠してしまった。 | (1)私は以前、 失敗したことを正直に 言えなかったことがある。 |
| 「『隠していたことを、 正直に伝える』ために、 相手にどのように話すか」 について、 経験とあわせて考えや 意見を書く。 | 【その後】 結果的に、 もっと言いにくくなった。 【変化】 だから、 相手がどう感じるかを考えながら 早めに伝えるようになった。 | (2)私は、 「正直に話すことは大切だ」 と分かっていても、 実際には言えなかった ことがある。 |
| 経験の前後で自分が どう変わったか を見る。 | (3)失敗したことを 隠してしまい、 あとになって 後悔したことがある。 |
京都教育大学附属桃山中 適性をみる検査Ⅰ 作文 書き出し例
「この文章を暗記しましょう」でないので、おぼえようと思わないでください。
| 入り方 | 例文 | 向いているお子さん |
|---|---|---|
| 出来事から | 「私は以前、友達と けんかしたことがある。」 | 具体的な経験を 思い出せる。 |
| 以前の自分から | 「私は以前、 失敗するとすぐに 人のせいにしていた。」 | 変化を説明しやすい。 |
| いまの考えから | 「私は、 失敗したときこそ 人の意見を聞くこと が大切だと思う。」 | まず考えが浮かぶ。 |
どれが正解ということでありません。
大切なのは、最初の一文を書いたあとに、「なぜそう思うようになったのか」へつながること。
「経験→変化・気づき」を図解する

「成長」といっても、立派になったという意味ではありません。
例えば、
- 相手の話を聞けるようになった
- 失敗してもすぐ諦めなくなった
- 言葉を選ぶようになった
- 自分と違う意見も聞けるようになった
- 誰かに相談できるようになった
- 以前より早く謝れるようになった
これもぜんぶ「変化」です。
小学生の作文に必要なのは、劇的な成長ではなく、本人にとっての小さな変化。
ー これを私たち年長者は「成長」と目を細めて言うのではありませんか?
京都教育大学附属桃山中 適性をみる検査Ⅰ 作文 何を書けばいいの?
「まず、自分の経験を思い出してみよう。」とお子さんにそっと伝えてみてください。

附属桃中の作文で、立派な経験を書く必要はありません。
大切なのは、その経験の前と後で、自分の何が変わったのか。
失敗した。
うまくいかなかった。
後悔した。
誰かに言われて気づいた。
少しだけ考え方が変わった。
― その「少し」が作文になる。そのように信じて取り組んでいます。

